2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

カフカ「変身」 絶望の二十世紀と不条理文学

しばしば耳にすることがある。地位も名誉もある立派な男が、そうだ、この男は実に社会の模範たるべき人物で、もう、そうとしか言いようのない完璧な人物で、十歳にして近隣で神童ありと騒がれ、十有五にして町始まって以来の英才との名声既に高く、その期待…

高村光太郎 「智恵子 抄」 非情の純愛 絶対孤独への反証

「そんなにもあなたはレモンを待ってゐた」―日本文学史に永遠に残る愛の絶唱であろう。歌った男の名は、高村光太郎。歌を贈られた女は、妻、智恵子。この日、智恵子は、七年にわたる精神病と肺結核とにより、ついにこの世を去った。世を去った? いや、そん…

夕陽さす部屋

ふと目が覚めると、僕は、タオルケットをお腹にかけて、自分の四畳半の勉強部屋で寝転がっていた。夏休みのある日の夕刻だ。窓から橙色の夕陽がさしこんでいる。僕が生まれたころから使っている古ぼけた扇風機がカタカタと鳴りながら風を送っている。台所か…