或る人の言葉

或る人が言った。

君を愛する人がこの世から一人もいなくなったら、その瞬間に君は死ぬ。それは神が定めた法則なのだ。だから、君がいま生きているってことは、この世界の中で、少なくとも誰か一人に愛されているってことなのだよ、と。

僕は或る人に尋ねた。

それは、いったい、誰なのでしょう。僕を愛してくれている人というのは、どこの誰なのでしょう。

或る人が言った。

おや、疑っているのかね。だが、いま君は、こうして生きているではないか。だから、疑ってはいけない。この世界に、君を愛している人が、必ず一人は、いるのだよ。

けれども僕は、信じられなかった。僕を愛している人がいるって?いるわけがない。バカを言っちゃいけない。そんなのは、嘘だ。嘘に決まってる!いったい、どこに、そんなおめでたい奴がいるっていうんだ?!

僕は叫んだ。「そんなバカな奴がいるなら、さあ、ここに連れてきてくれ!」

すると、或る人は、笑って言った。

そこにいるではないか。君自身だよ。